チリのテロワールに宿るボルドーの魂:ヴィーニャ・アキタニア(Vina Aquitania)

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ヴィーニャ・アクィタニアは、フランス・ボルドーの伝統と、チリの特異なテロワールが緻密に交差する唯一無二のワイナリーである。少数精鋭のチームによる妥協なきワイン造りは、土地の記憶と造り手の情熱をグラスの中に鮮やかに描き出す。

目次

ワイナリーのフィロソフィー

ヴィーニャ・アキタニアが体現するのは、新世界の豊かなポテンシャルを旧世界の「エレガンス」というフィルターで濾過し、唯一無二の「アイデンティティ」を確立する戦略的アプローチである。この哲学は、創業に関わったボルドーの巨匠たちの言葉に深く根ざしている。

https://aquitania.cl/en/
  • ブルーノ・プラッツ氏: 「グラスの中のワインは、気候、土壌、ブドウ、そしてそれに関わった人々の情熱を語るものである。」
  • ポール・ポンタリエ氏: 「良質なワインは快楽を与え、偉大なワインは感動を与える(Good wines give us pleasure, great wines give us emotions.)」
  • フェリペ・ド・ソルミニハック氏: 「ワイン造りは個人の仕事ではなく、チームの努力の結晶である。芸術、科学、技術を通じて人間が情熱を表現する場なのだ。」

小規模生産に徹し、土地の個性を科学的かつ芸術的な視点で引き出す姿勢が、同ワイナリーを世界の頂点へと押し上げている。

歴史:ボルドーの巨匠たちによる「四銃士」の物語

ヴィーニャ・アクィタニアの歴史は、理想のテロワールを求めたボルドーの重鎮たちによる探索から始まった。

From left to right: Ghislain de Montgolfier, Paul Pontallier, Felipe de Solminihac and Bruno Prats https://aquitania.cl/en/about-us/
  • 1984年: ブルーノ・プラッツとポール・ポンタリエがチリでの探索を開始。
  • 1990年: マイポ・ヴァレーの歴史的中心地、ペニャロレンの「ケブラーダ・デ・マクル」にて18ヘクタールの土地を取得。チリ出身の醸造家フェリペ・ド・ソルミニハックが参画。
  • 1993年: ワイナリー施設が完成。同年、最初のラベルとなる「ポール・ブルーノ」の生産を開始。
  • 2002年: ギスラン・ド・モンゴルフィエが加わり、アレクサンドル・デュマの小説になぞらえた「四銃士(The Fourth Musketeer)」が揃う。

当初「ポール・ブルーノ」として生産されていたワインは、後にアイコンの「ラズリ」と「アクィタニア・カベルネ・ソヴィニヨン」の2つのラベルへと進化を遂げた。現在は創設者たちの第二世代が運営を継承し、世界的な販売網を支えている。

テロワール:二つの対照的な土地

ヴィーニャ・アクィタニアは、チリを代表する二つの異なるテロワールから、対照的な個性を生み出している。

地形

  • マイポ・アンデス(ペニャロレン): 標高750m。アンデス山脈の最前線に位置するサン・ラモン山の山裾に位置する。
  • マレコ(トライゲン): 南緯38度。チリ南部の未開の地。フェリペ・ド・ソルミニハックは、かつてビオビオ川以南に葡萄畑が存在しなかった時代に、この地の可能性を見出した先駆者である。

気候

  • マイポ・アンデス: 夏の日中は33度まで上昇するが、夜間は標高3,253mのサン・ラモン山頂から吹き下ろす冷風により、13〜15度まで低下する。この15〜20度の大きな日較差(サーマル・アンプリチュード)が、冷涼な地域特有の芳香分子「ヴィティスパイレン(Vitispyrene)」の生成を促し、メンソールや樟脳のような清涼感あるアロマをもたらす。
  • マレコ: 冬の降水量は1,000mmに達する。夏は乾燥し、成熟期の気温が18度を超えない冷涼さがエレガンスと酸の骨格を形成する。また、夏に吹く「南風」が樹体を乾燥させるため、精密なドリップ灌漑による水分管理が必要となる。

土壌

  • マイポ・アンデス: 沖積・崩積土壌。有機物含有量が極めて低く、石の多い痩せた土壌に薄い粘土質シルト層が重なる。この「貧しい土壌」が収量を自然に制限し、凝縮感のあるブドウを育む。高い排水性により根は深く張る。
  • マレコ: 火山起源の深い赤色粘土質土壌。マイポとは対照的に有機物が豊富で保水性が高く、ワインに複雑なミネラル感とボリュームを与える。

醸造家:世界最高峰の知見が集結するチーム

創設パートナー(コンサルタント)

  • ブルーノ・プラッツ: 元シャトー・コス・デストゥルネル所有者。世界各地でプロジェクトを成功させた巨匠。
  • ポール・ポンタリエ: 元シャトー・マルゴー総支配人。1982年にサンティアゴで醸造学教授を務めるなど、チリのポテンシャルをいち早く見抜いていた。
  • ギスラン・ド・モンゴルフィエ: 元シャンパーニュ・ボランジェ社長。フランスワイン界の重鎮。
  • フェリペ・ド・ソルミニハック: 醸造ディレクター。ボルドーで醸造学を修め、マレコ・ヴァレーをD.O.として認めさせた開拓者。

現在の運営・醸造チーム

  • エドゥアルド・ド・ソルミニハック: ゼネラル・ディレクター。
  • ホセ・マニュエル・ペラルタ: チーフ・ワインメーカー。
  • トライゲン栽培チーム: ホセ・シュルツ、オリアン・ソト、カルロス・リベラといった10年以上の経験を持つエキスパートがマレコの過酷な環境を管理している。

ワインのラインナップ

アイコン・ワイン (Icon)

  • Lazuli(ラズリ) カベルネ・ソヴィニヨン80%、メルロー10%、プティ・ヴェルド10%。ペニャロレンの最高区画から造られる「宝石」の名を冠した逸品。ヴィティスパイレン由来のメントール、熟した赤系果実、タバコやモカの複雑な香り。フレンチオーク樽(新樽33%)で16ヶ月熟成。

限定エディション (Limited Edition)

  • Paul Bruno(ポール・ブルーノ) カベルネ・ソヴィニヨン100%。1993年から2000年まで生産されていたワイナリーの原点となるスタイルの復刻。伝統的な仏チリ折衷の醸造を体現し、16ヶ月の樽熟成(新樽10%)を経て、長期熟成に耐えうる強固な構造を持つ。

スーパー・プレミアム (Super Premium – SOLdeSOLシリーズ)

マレコのパイオニアが生んだ、チリの白・ロゼ・泡の概念を覆す冷涼気候シリーズ。

  • SOLdeSOL Brut Nature シャルドネ50%、ピノ・ノワール50%。伝統的製法。ベースワインはフレンチオーク樽で発酵・6ヶ月熟成後、24ヶ月の瓶内二次発酵。ドサージュを行わない極辛口。
  • SOLdeSOL Chardonnay マレコ産シャルドネ100%。収量を4,000kg/haに抑え、凝縮感を追求。フレンチオーク樽で発酵後、シュール・リーの状態で9ヶ月熟成(バトナージュは週2回)。圧倒的な酸とミネラル感。
  • SOLdeSOL Sauvignon Blanc デイヴィス・クローン5を使用。50%を樽発酵、50%をステンレスタンク。4ヶ月のシュール・リー熟成。柑橘、グリーンペッパー、火山性土壌由来の火打石のニュアンス。
  • SOLdeSOL Pinot Noir クローン777とマサル・セレクションの混植。100%フレンチオークの新樽で8ヶ月熟成。サクランボや湿った土、グラファイト(石墨)の複雑味。



プレミアム (Premium – Aquitaniaシリーズ)

  • Aquitania Cabernet Sauvignon カベルネ・ソヴィニヨン85%、シラー9%、メルロー6%。フレンチオーク樽で8ヶ月熟成。カシスのアロマに、アンデス特有の爽やかなヴィティスパイレンの香りが溶け込む。
  • Aquitania Carménère カメルネール95%、カベルネ・ソヴィニヨン5%。ペニャロレンではフェノール類が成熟しなかったため、より温暖なプウモの区画を厳選。4ヶ月熟成(樽60%、タンク40%)。パプリカとトフィーの調和。
  • Aquitania Chardonnay マレコ産。樽を使用せずステンレスタンクで9ヶ月シュール・リー熟成。フレッシュな果実味と高密度の酸を強調。
  • Aquitania Rosé ピノ・ノワール100%。ソフトプレスによる淡いサーモンピンク。セニエは行わず、フレッシュな酸とアロマを保持するためスクリューキャップを採用。




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ヴィーニャ・アキタニアは、チリの地においてボルドーの魂を具現化した「エレガンスの指標」である。彼らの歩みは単なる成功したビジネスではなく、テロワールの本質を解明し、チリワインの定義を「力強さ」から「洗練」へと書き換えた知的な探究の歴史そのものといえる。

ソース

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この記事を書いた人

50代なかばにしてJ.S.A. (一般財団法人日本ソムリエ協会) のワイン検定ブロンズ、シルバーに合格。翌年に同協会のワインエキスパートに一発合格。
もっと早くワインに親しんでいればとくやむこの頃。
・J.S.A. (一般財団法人日本ソムリエ協会) 認定ワインエキスパート
・J.S.A. (一般財団法人日本ソムリエ協会) 正会員

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