ショウ・アンド・スミス|豪州初のマスター・オブ・ワインが造る、アデレード・ヒルズ屈指のソーヴィニヨン・ブラン

THE WORLD FINE WINE | オーストラリア / 南オーストラリア州 アデレード・ヒルズ / ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、シラーズ、ピノ・ノワール

「ショウ・アンド・スミスの30年余りは、自分が心から興奮でき、心から誇れる、そして私たちにできる最高のものを体現するワインを造り続けることだった」(原文:”Our 30+ years of Shaw + Smith have been about making wines that I’m genuinely excited about, genuinely proud of, and represent the best that we can possibly do.”)— 創業者マイケル・ヒル・スミスMWの言葉

項目内容
ワイナリー名ショウ・アンド・スミス(Shaw + Smith)
設立年1989年
所在地オーストラリア/南オーストラリア州 アデレード・ヒルズ(バルハンナ)
創業者マーティン・ショウ、マイケル・ヒル・スミスMW(従兄弟同士)
主要品種ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、シラーズ、ピノ・ノワール
代表ワインソーヴィニヨン・ブラン、M3シャルドネ、単一畑シリーズ(レンズウッド/バルハンナ)
参考価格帯約2,400円〜11,000円

オーストラリアワインと聞いて、濃厚なバロッサのシラーズを思い浮かべる人は多い。だがショウ・アンド・スミスが1989年に選んだのは、その真逆だった。バロッサより昼で約4℃、夜で約8℃も涼しい高地、アデレード・ヒルズ。誰もが「赤ワインには寒すぎる」と考えていた丘に、豪州初のマスター・オブ・ワインと国際派醸造家の従兄弟コンビが賭けたのだ。

その答えが、いまや豪州ソーヴィニヨン・ブランのベンチマークと呼ばれる1本だ。ワイン評価誌ジェームス・ハリデーは2019年版でソーヴィニヨン・ブラン(2019VT)に95点を与え、日本でも雑誌dancyuのワイン大賞(2,000円台のソーヴィニヨン・ブラン部門)に選ばれている。ニュージーランドでもロワールでもない、第三のソーヴィニヨン・ブランの物語がここにある。

目次

歴史|「思いつき」から始まった、豪州で最も計算された賭け

1988年、豪州初のマスター・オブ・ワイン誕生

物語は創業の前年に始まる。マイケル・ヒル・スミスが、ワイン界最難関の資格マスター・オブ・ワイン(MW)に、オーストラリア人として初めて合格したのだ。国際的な審査員・コンサルタントとして世界のワインを知り尽くした男の目に、母国の可能性と課題の両方が映っていた。

1989年、従兄弟ふたりの創業

一方、従兄弟のマーティン・ショウはアデレード大学とボルドー大学で醸造を学び、ヨーロッパを飛び回る「フライング・ワインメーカー」として活躍していた。ふたりが一緒にワインを造ると決めたのは、公式サイトいわく「半ば思いつき(somewhat on a whim)」だったという。だが選んだ土地は思いつきではなかった。標高が高く、冷涼で、雨に恵まれたアデレード・ヒルズ。ここなら世界と戦える白が造れる——ふたりの確信は、1990年の初ヴィンテージのソーヴィニヨン・ブランで早くも形になる。

2000年、バルハンナに自前のワイナリー

創業から10年間はソーヴィニヨン・ブランとシャルドネだけを造り続けた。この禁欲的な絞り込みが「冷涼産地の白の専門家」という評判を固めていく。1999年にバルハンナの土地を購入し、翌2000年に自社ワイナリーとテイスティングルームが稼働。当時のアデレード・ヒルズでは行政がワイナリー建設に懐疑的で、マーティン・ショウは許認可の取得に奔走したと振り返っている。2002年にはシラーズにも着手し、冷涼産地の赤という新しい扉を開いた。

2012年以降、単一畑の時代へ

2012年にレンズウッド畑(20ha)を取得し、畑の個性をそのまま瓶詰めする単一畑シリーズへ舵を切る。2020年には最も標高が高く冷涼なピカデリーに、1ヘクタールあたり1万本超という豪州では異例の高密植畑を開発。次世代のエラ・ショウ(2019年〜)とマチルダ・ヒル・スミス(2022年〜)もチームに加わり、物語は二世代目に入っている。

テロワール|アデレード・ヒルズという「冷涼な例外」

アデレード・ヒルズは、温暖な南オーストラリア州にあって例外的に冷涼な高地産地だ。ロフティ山系に沿って標高350〜710mに畑が広がり、隣接するバロッサ・ヴァレーより昼間で約4℃、夜間で約8℃低い。この寒暖差と遅い成熟が、シャープな酸と張りつめたアロマを生む。ソーヴィニヨン・ブランの educated な緊張感は、まさにこの気候の産物だ。

ショウ・アンド・スミスは畑ごとに品種を厳密に選び分けている。主要畑を整理しよう。

畑名場所・標高土壌の特徴ワインのスタイル
バルハンナ(Balhannah)ワイナリー周辺の丘陵、340〜380m赤粘土の上に砂質ローム(Sandy Loam over Red Clay)。下層に鉄鉱石・珪岩(Quartzite)・頁岩の小石ソーヴィニヨン・ブランの主力畑。北向き斜面でシラーズも高密植
レンズウッド(Lenswood)ワイナリーの北西約10km、455〜500m粘土の上に茶色ローム(Brown Loam over Clay)。尾根に砕けた頁岩(Broken Shale)最冷涼クラスの畑。シャルドネとピノ・ノワールの単一畑ワインを生む
ピカデリー(Piccadilly)北西約15km、500m砂質・粘土質ローム、鉄鉱石と石英(Quartz)1ha当たり1万本超の高密植。次世代のシャルドネ・ピノの実験場
ロベサル(Lobethal)標高500m石英・鉄鉱石・砂岩・頁岩が混じる砂質粘土シャルドネ10ha

面白いのは、バルハンナやピカデリーの土壌に珪岩や石英——つまり「石」の要素が随所に顔を出すことだ。プイィ・フュメの火打石ほど前面には出ないが、ソーヴィニヨン・ブランの引き締まったミネラル感の背景として押さえておきたい。

醸造家|「老いたロックバンド」が選んだ最強のメンバー

ショウ・アンド・スミスの現在の醸造は、チーフワインメーカーのアダム・ワデウィッツが率いている。創業者ふたりがいまも健在でありながら、経営と醸造の第一線は次の世代へ計画的に引き継がれているのがこのワイナリーの強さだ。マイケル・ヒル・スミスはその考え方をこう語っている。

「自分たちを挑発してくれる傑出した人材で周りを固める必要があると気づいた。老いてきたロックンロールバンドはどうするか? 最高のミュージシャンを雇いに行くのさ」(原文:”…We realised that we needed to surround ourselves with outstanding people who would challenge us. If you’re an ageing rock and roll band, what do you do? You go out and hire the best musicians you can.”)— 創業者マイケル・ヒル・スミスMWの言葉

実際のメンバーは豪華だ。アダム・ワデウィッツは共同CEOを兼ね、営業・マーケティングを率いるデイヴィッド・ルミアーもマスター・オブ・ワイン。一つのワイナリーにMWがふたり在籍する体制は、豪州でも稀有だ。2024年からは地元アデレード・ヒルズ出身のアレックス・クラークがワインメーカーとして現場を指揮する。

造りは一貫して抑制的だ。シラーズを例に取ると、開放式発酵槽で全房40%・天然酵母発酵、フレンチオーク228Lで14カ月熟成(新樽比率30%)。派手な抽出や樽で飾らず、畑と品種の輪郭をそのまま残す。ソーヴィニヨン・ブランではフレッシュさを守るためマロラクティック発酵を行わない。

ワインラインナップ

ショウ・アンド・スミスのラインナップは、約2,400円のソーヴィニヨン・ブランから約11,000円の単一畑シリーズまで、明快な三層構造になっている。日本にはモトックスが正規輸入しており、入手性は良好だ。

Signature Wine|単一畑シリーズ

頂点に立つのは、畑の名を冠した単一畑(Single Vineyard)シリーズだ。

  • レンズウッド・ヴィンヤード シャルドネ(約10,700〜10,900円)— 標高455〜500mの最冷涼区画から。高地シャルドネらしい緊張感と、燻るような深みを併せ持つ。ブラインドで白ブルゴーニュと間違える評者が出るほどの精度だ。
  • レンズウッド・ヴィンヤード ピノ・ノワール(約10,900円)— 張りのある酸と赤果実、出汁のような旨み。アデレード・ヒルズのピノの現在地を示す1本。
  • バルハンナ・ヴィンヤード シラーズ(約10,700〜10,900円)— 北向き斜面の高密植シラーズ。白胡椒と黒果実、冷涼産地ならではの艶やかな酒躯。

Premium Wine|Fine Wineの入口

ここがTWFW読者にまず薦めたいゾーンだ。

  • M3 シャルドネ(希望小売価格4,550円・税抜/実売5,000円前後)— 「M3」は創業家のマーティン、マシュー、マイケルの3人の頭文字。白い花と熟した柑橘、引き締まった酸、控えめな樽。ワイナリーの顔と呼ばれる白で、Fine Wineの入口として申し分ない。同価格帯の白ブルゴーニュ(マコン上級クラス)と飲み比べると、果実の明るさと酸の精度の違いがよく分かる。まず試すならこの1本だ。
  • シラーズ(希望小売価格4,750円・税抜/実売5,200〜5,400円前後)— ダークベリーの凝縮感に白胡椒のスパイス。力強さより抑制と伸びやかさで勝負する、冷涼シラーズの好例。

Casual Wine

  • ソーヴィニヨン・ブラン(参考上代3,520円/実売2,420〜3,740円前後)— ピンクグレープフルーツの丸みある果実とクリスピーな酸。dancyuワイン大賞にも選ばれた、豪州SBの定番。
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よくある質問|ショウ・アンド・スミス

Q. ショウ・アンド・スミスはどんなワイナリー?

A. 豪州初のマスター・オブ・ワイン、マイケル・ヒル・スミスと従兄弟の醸造家マーティン・ショウが1989年に設立した、アデレード・ヒルズ専門のワイナリーだ。冷涼な高地産地に特化し、ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、シラーズ、ピノ・ノワールで豪州屈指の評価を得ている。

Q. ショウ・アンド・スミスのソーヴィニヨン・ブランはどんな味わい?

A. ピンクグレープフルーツを思わせる丸みのある果実味と、クリスピーな酸の調和が特徴だ。ニュージーランド・マールボロの華やかなハーブ香とも、プイィ・フュメの火打石的ミネラルとも違う、果実の明るさと精緻な酸で飲ませる第三のスタイルといえる。マロラクティック発酵を行わず、フレッシュさを最優先している。

Q. ショウ・アンド・スミスのワインはどこで買える?価格は?

A. モトックスが日本の正規輸入元で、全国のワインショップやECで購入できる。ソーヴィニヨン・ブランが実売2,400〜3,700円前後、M3シャルドネとシラーズが5,000円前後、単一畑シリーズが11,000円前後という三層構成だ。

Q. ショウ・アンド・スミスのワインに合う料理は?

A. ソーヴィニヨン・ブランなら、あさりのパスタや寿司など魚介全般と好相性だ。M3シャルドネは鶏や豚のグリル、白身魚のムニエルに合わせたい。シラーズは白胡椒のニュアンスがあるので、胡椒を効かせた牛肉料理やラムと引き立て合う。

Q. アデレード・ヒルズの中でショウ・アンド・スミスはどんな位置づけ?

A. アデレード・ヒルズを世界に知らしめた牽引役であり、この産地のベンチマーク的存在だ。ワインエキスパートの視点で言えば、中級者が「オーストラリア=濃い赤」という先入観を壊すのに最適な造り手で、冷涼産地オーストラリアの入口としてまず押さえるべき1軒だと考えている。

まとめ|冷涼産地オーストラリアの基準点

アデレード・ヒルズのソーヴィニヨン・ブランを語るなら、ショウ・アンド・スミスを外すことはできない。豪州初のマスター・オブ・ワインが選んだ冷涼な高地は、マールボロともロワールとも違う第三のソーヴィニヨン・ブランを生んだ。シャルドネ、シラーズ、ピノ・ノワールを含め、冷涼産地オーストラリアの現在地を知る基準点として、まず手に取るべき造り手だ。実売3,000円前後のソーヴィニヨン・ブランから始めて、M3シャルドネへ、そしていつかレンズウッドの単一畑へ——その旅の先に、この丘の真価がある。


THE WORLD FINE WINE | Fine wine begins with a great story.

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この記事を書いた人

50代なかばにしてJ.S.A. (一般財団法人日本ソムリエ協会) のワイン検定ブロンズ、シルバーに合格。翌年に同協会のワインエキスパートに一発合格。
もっと早くワインに親しんでいればとくやむこの頃。
・J.S.A. (一般財団法人日本ソムリエ協会) 認定ワインエキスパート
・J.S.A. (一般財団法人日本ソムリエ協会) 正会員

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