THE WORLD FINE WINE | アプリ紹介 / Tasting Notes(iPhone)
第一アロマの果実香は捉えられても、花やハーブの香り、第二・第三アロマまで分けて言葉にできない。テイスティングノートの香りの欄は、いつも要素が3つ4つで止まっていた。
香りが、言葉になる。 グラスを傾けながら色を見て、アロマホイールで香りを探し、味わいを選んでいく。分類ごとにたどっていくと、それまで出てこなかった言葉が自然に見つかる。
言葉が、物語になる。 書きためた言葉を見返すと、あの日の一本を思い出し、気づかなかった自分の好みが見えてくる。一杯ずつの言葉が、自分だけのワインの物語になっていく。
Tasting Notes は、そのために作った iPhone アプリだ。 選択肢をタップしていくだけでテイスティングノートが整い、たまった記録はボトルの写真が並ぶ一覧や統計で、いつでも眺めて楽しめる。無料で使え(記録15件・飲みたいワイン10件まで)、アカウント登録もいらない。
2026年10月21日、App Store で公開した。
なぜ作ったのか
手帳のノートは、だんだん開かなくなった
このブログでは、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、アメリカなど、新世界のワインを中心にテイスティングノートを書いてきた。
もともと記録には、手帳タイプのテイスティングノートを使っていた。ところが、続かない。記入欄の文字が小さくて書きづらいし、ボトルの写真も貼れない。あとから「あの品種のワインだけ並べたい」と思っても、紙ではソートもできない。少しずつ開く回数が減り、いつの間にか使わなくなっていた。
理想のアプリが見つからない
それならアプリだ、と探してみたが、これというものが見つからなかった。
唯一いいなと思ったのが WSET のアプリだ。ただ、一度入力した記録をあとから編集できない。輸入元やヴィンテージを調べ直したり、飲み終えてから印象を書き足したりしたい私には、そこが大きな不満だった。
もうひとつ、自分の弱点もあった。香りを記録するのが苦手なのだ。グラスを前にしても言葉がなかなか出てこず、あとでノートを見返すと、香りの欄には要素が3つ4つしか書かれていない、ということがよくあった。
Obsidian で自作して、アプリへ
Notion でテイスティングのデータベースを作っている人がいるのを知り、それを参考に、ノートアプリの Obsidian で自分用のテイスティングノートを作ってみた。一応は使える。でも、グラスを片手に入力するにはどうにも使いづらい。
「いっそアプリを作れないだろうか」と考えていたとき、AI の Claude Code が Apple の開発ツール Xcode を操作して、iPhone アプリまで作れると知った。
半信半疑ながら、まずはObsidianのテイスティングノートを移植してプロトタイプを作成した。本当にiPhoneで動作するアプリができた。そこからは、作りたいものを言葉で伝え、できあがったものを試し、また直してもらう、の繰り返しだ。私自身はコードを一行も書いていない。 それでも1か月弱で、自分で使いたくなるアプリが完成した。
記録するのが楽しくなければ続かないし、眺めるのが楽しくなければ、記録した意味が半分になる。目指したのは、書くときも、見返すときも気持ちのいいアプリだ。
香りが、言葉になる
選ぶだけで、ノートが整っていく
記録の画面には、白・赤・ロゼ・泡それぞれに合わせた選択肢が、外観 → 香り → 味わい → 総評というテイスティングの順で並んでいる。上から順に選んでいけば、毎回同じ形のノートができあがる。

外観の色調は、グラスを上から覗いたときの色を描いた丸いサンプルから選ぶ。先に「色調の濃さ」をスライダーで選ぶと、サンプルの色もその濃さに変わるので、目の前のグラスと見比べて、いちばん近い色をタップするだけでいい。赤ワインなら縁の色合い(紫とオレンジの割合)も残せる。
甘み・酸味・タンニン・ボディ・余韻・品質は、スライダーで段階を選ぶ。
画面の作りは、何度も試しては直し、を繰り返した部分だ。項目を足せば便利になるが、そのぶん画面は重くなる。シンプルさと使いやすさのちょうどいい落としどころを探して作り込んだ。
香りは、アロマホイールから

香りの記録は、このアプリでいちばん力を入れたところだ。果実・花・ハーブ・スパイス・樽・熟成といった大分類を輪に並べたアロマホイールから、感じた香りを選んでいく。
- タップで選択、長押しで「強い香り」(★)
- ホイールは白・赤・ロゼ・泡で別々。白なら柑橘や核果、赤なら赤系・黒系果実が並ぶ
- ホイールにない香りは、自分で追加できる
いちばん悩んだのは、ホイールにどの香りを入れるかだった。ワインの香りの表現は、人によってほとんど無限にある。全部を並べればホイールは読めなくなるし、絞りすぎれば自分の感じた香りが見つからない。そこで、代表的な香りを並べたうえで、ユーザーが自由に香りを追加できるようにした。
選んだ香りからは、第一・第二・第三アロマの分類と、「カシスやブラックベリーなどの強い黒系果実の香りに、ヴァニラのニュアンス。」のような香りメモの文章が自動で作られる。
香りを言葉にするのが苦手だった私が、「まず果実、その中で赤系か黒系か」「次にスパイス」と分類ごとに見ていくことで、スムーズに言葉が出てくるようになった。以前は2つ3つで止まっていた香りの欄が、今は自然と埋まっていく。
香りの語彙を覚えている途中の人にとっても、ホイールそのものが香りの地図になるはずだ。
一歩踏み込んだ記録も

もっと深く記録したい人のために、酸とタンニンの構造の項目を用意した。酸の形(直線・垂直・球体など)とタイプ、タンニンを感じる場所(口の図をタップして選ぶ)とタイプを残せる。選んだ構造に合う代表的なブドウ品種も表示される。
この考え方は、Nick Jackson MW の著書『Beyond Flavour』を参考にしている。日本語版は出ていないので、洋書で読んだ。特に、白ワインは酸で、赤ワインはタンニンでその個性を捉えるという考え方に強く惹かれた。
アプリに組み込んでから、意識してテイスティングするようにしている。ただ、これがとても難しい。正直なところ、まだまだ修練が必要だと感じている。だからこそ、記録しながら少しずつ精度を上げていける項目として入れておきたかった。
ほかにも、ブドウ品種と比率(%)、国・地域、価格、アルコール度数、ボトル・裏ラベル・グラスの写真を残せる。もちろん、保存したあとでも、いつでも編集できる。
項目が多すぎて記録が重くならないよう、ふだんはよく使う項目だけを出している。構造などの詳細な項目は、記録の画面のメニューから表示できる(設定で、最初から表示もできる)。
ブラインドで答え合わせ

一覧の+を長押し、または新しい記録のメニューから「ブラインドで記録」を選ぶと、ワイン名や品種の欄が隠れ、品種・国・ヴィンテージを予想する欄が出る。あとで正解を入れると、予想と正解が並んで ○✗ が付く。
当たったときの嬉しさも、外れたときの「なぜ間違えたか」を考える時間も、テイスティングの楽しさのひとつだと思う。
飲みたいワインは、写真1枚で
ワインショップの棚や雑誌、レストランのワインリストで気になったワインは、「飲みたい」のタブに写真1枚で残せる。写真は5枚まで、どこで知ったか(レストラン・ショップ・雑誌など)は選ぶだけ。生産者や品種などは、入れたいときだけ「詳しく入力」から入れればいい。
国や品種を入れておくと、これまでの記録で★を高く付けている国・品種に当てはまるワインに「★ 好みに近い」の印が付く。気になるワインは、詳細の共有ボタンから写真とメモをメッセージなどでそのまま人に送れる。実際に飲んだら「飲んだので記録する」で、名前や写真を引き継いだまま記録の画面が開く。
「好みに近い」ワインばかりでなく、これから広げたい国や品種の候補をためておく場所としても使える。後述する統計で自分の偏りに気づいたら、ここに次の一本を集めておけばいい。
言葉が、物語になる
書きためた言葉は、たまるほど一本の物語になっていく。あの日の一杯を思い出させてくれるのも、自分の好みの変化を教えてくれるのも、この積み重ねだ。
ボトルの写真が並ぶ一覧

記録は、ボトルの写真と一緒に一覧に並ぶ。手帳では貼れなかった写真が、ここでは主役だ。写真がない記録は、記録した色調から描いた「グラスの色」で並ぶので、写真を撮り忘れても一覧が寂しくならない。表示はリストとタイルを切り替えられ、タイルにすると写真が大きく並ぶ。
ワイン名・産地・品種・香り・メモの言葉で検索でき、種類・好み・国で絞り込める。「★4.5以上のピノ・ノワール」を並べて眺める、といった楽しみ方もできる。紙のノートでは叶わなかったことだ。

一本を開くと、その日のノートがまとまって表示される。左右にフリックすれば前後の記録へ移れるので、アルバムをめくるように見返せる。写真は画面いっぱいに拡大できる。
統計で、自分の好みが見えてくる

記録がたまるほど楽しくなるのが統計だ。
- あなたの好み:高い★を付けたワインの種類・国・ブドウ品種・価格帯・香り・味わいの傾向
- 本数・産地:月ごとの本数、★の分布、よく飲む品種・国・地域、価格帯ごとの本数
- 香り・味わい:香りの傾向とよく選ぶ香り、甘み・酸味・ボディ・タンニンの分布
「高く評価しているのはフランスのピノ・ノワールで、5,000〜9,999円の価格帯。酸は高め」といった自分の好みの型が、記録から自然に浮かび上がる。白・赤・ロゼ・泡ごと、全期間・過去6か月・過去12か月・年ごとに切り替えられる。
私自身、統計を眺めてみて、最近はチリ、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドのワインばかり飲んでいることに改めて気づいた。新世界のワインを中心に紹介しているブログなので当然といえば当然だが、数字で見ると思った以上に偏っている。もう少しフランスやイタリアにも手を広げたい。そう思わせてくれたのも、このアプリだ。
一杯の記録を、シェアする

写真・ワイン名・好み・印象をまとめた縦長のシェア画像を作れる。背景は白・赤・ロゼ・泡それぞれの色で、アロマホイールの図を写真と並べて載せることもできる。X や Instagram にそのまま投稿できる。
記録を、ずっと手元に
記録は、写真を埋め込んだ Markdown ファイルとして、好きなフォルダに保存できる。iCloud Drive や Obsidian の保管庫を保存先にすれば、パソコンからもノートとして読める。Obsidian でノートを作っていた頃の自分が欲しかった機能でもある。
すべての記録(と飲みたいワイン)をまとめて保存すればバックアップになり、保存したファイルはアプリに読み込んで戻せる(写真も戻る)。何年分もの記録を、特定のアプリの中に閉じ込めずに眺め続けられることも、大事にしたかった点だ。
料金とプライバシー
- 無料で、記録15件・飲みたいワイン10件まで、すべての機能を使える。記録を保存したあとに、広告が表示されることがある
- アプリ内課金「プレミアム」(1,200円・買い切り)で、数の制限がなくなり、広告も消える
- アカウント登録は不要。記録と写真は、iPhone の中と、自分で選んだフォルダにだけ保存される
無料の15件は、だいたい3〜4か月ほど使える数だと考えて決めた。それだけ使ってもらえれば、このアプリが自分に合うかどうか、きっとわかる。気に入ってくれた人に、続きを使ってもらえればいい。
対応は iPhone(iOS 17 以降)。日本語と英語で使える。
これからの予定
次は Android 版、その次に iPhone Duo と iPad に対応した版をリリースしたいと考えている。iPhone 以外の人にも、香りが言葉になる楽しさを届けたい。
こんな人に向いている
- 香りがなかなか言葉にならない人
- テイスティングノートを続けたいが、手帳や文字で書くのが続かなかった人
- 記録したあとで、情報を書き足したり直したりしたい人
- 飲んだワインを、写真と一緒に見返して楽しみたい人
- J.S.A. ソムリエ・ワインエキスパートや WSET の学習で、テイスティングの語彙と手順を身につけたい人
- ブラインドテイスティングの練習をしている人
- 自分の好みの傾向を、記録から知りたい人
よくある質問
Q. 無料で使えるか
使える。記録15件・飲みたいワイン10件までなら、すべての機能を無料で使える。それより多く残したい場合や広告を消したい場合は、「プレミアム」(1,200円・買い切り)のアプリ内課金がある。15件を超えても、今ある記録はそのまま見られる。
Q. サブスクリプション(月額課金)はあるか
ない。プレミアムは1,200円の買い切りで、一度購入すればその後の支払いはない。
Q. テイスティングの知識がなくても使えるか
使える。選択肢から選んでいくだけなので、言葉を知らなくても記録できる。使っているうちに、色調や香りの語彙が自然に身につく作りにしている。
Q. 記録したあとで編集できるか
できる。保存した記録は、いつでも開いて書き直せる。あとで調べた情報を足したり、飲み終えてからの印象を書き加えたりできる。
Q. 記録はどこに保存されるか
iPhone の中に保存される。運営者のサーバーには送られない。Markdown での保存を使うと、自分で選んだフォルダにもファイルが保存される。
Q. 機種変更したら記録はどうなるか
iPhone のバックアップ(iCloud バックアップなど)から復元すれば、記録も引き継がれる。アプリを削除すると記録も消えるので、設定の「すべての記録をフォルダに保存」でバックアップを取っておくと安心だ(飲みたいワインも一緒に保存される)。保存したファイルは「フォルダから記録を読み込む」でアプリに戻せる。
Q. iPad や Android では使えるか
今は iPhone 向けだ。次は Android 版、その後に iPhone Duo・iPad への対応版のリリースを予定している。
Q. 英語で使えるか
使える。iPhone の言語が英語なら英語で表示される。日本語の iPhone でも、設定の「英語モードで使用」で英語に切り替えられる。
まとめ
香りが、言葉になる。言葉が、物語になる。 Tasting Notes は、そのための iPhone アプリだ。
目指したのは、気持ちよく、スムーズに記録できること。グラスを前に、色サンプルとアロマホイールで選んでいけばノートが整う。香りがなかなか言葉にならない人にこそ、ぜひ使ってみてほしい。分類ごとに香りを探していくうちに、きっと言葉が出てくるようになる。
そして、記録したあとは統計を眺めてみてほしい。私が新世界ばかり飲んでいたことに気づいたように、意外な発見があるかもしれない。
一杯ずつ書きためた言葉が、いつか自分だけのワインの物語になる。その楽しさを、ぜひ味わってほしい。
お酒は20歳になってから。飲酒は適量を楽しみましょう。
THE WORLD FINE WINE | Fine wine begins with a great story.
