THE WORLD FINE WINE | ワイン用語解説 / セイヴォリー(Savoury/Savory)
ワインのテイスティングノートで「セイヴォリー」という言葉を見たことがある人は多いはずだ。なんとなく褒め言葉らしいのは伝わってくるのに、いざ自分で説明しようとすると言葉に詰まる。そんな用語のひとつだと思う。セイヴォリーとは、果実の甘さや花の華やかさではなく、塩味・旨味・スパイス・きのこ・ドライハーブ・なめし革といった「食事寄りの香りや味わい」を指す言葉だ。
辞書の意味
Oxford Learner’s Dictionariesでは、savouryは主に料理について使う形容詞で、塩気があり甘くないこと、あるいは好ましい風味や香りを持つことを指すとされている。対になる語として例文中で並べられているのがsweet(甘い)で、関連語には否定形のunsavoury(不快な、いかがわしい)がある。
綴りは英国式がsavoury、米国式がsavory。カタカナ表記も「セイヴォリー」「セイボリー」と揺れるが、指している中身は同じだ。
ワインにおける「セイヴォリー」の使われ方
ワインの世界では、辞書の「塩気がある」という意味よりもう少し広く、果実や花の香りとは対照的な、落ち着いた食事向きの風味全般を指す言葉として使われている。
フルーティ・フローラルの対極にある表現
イチゴやブラックベリーのような果実味、バラやスミレのような花の香りが前に出るワインを「華やかなタイプ」とするなら、セイヴォリーはその対極、料理と一緒に飲みたくなる落ち着いたタイプを指す。
具体的にはこんな香りや味わいを指す
- きのこ(マッシュルーム、干し椎茸、トリュフ)
- ドライハーブ(タイム、オレガノ、セージ)
- スパイス(黒胡椒、クローブ、八角)
- なめし革、レザー
- 鉱物的なニュアンス、塩気
- 出汁や醤油を思わせる旨味
アーシーとの関係
森の土や落ち葉、湿った土壌を思わせる「アーシー(Earthy)」というニュアンスとも、セイヴォリーはよく並んで語られる。両者は重なる場面が多く、アーシーはその中でも「土っぽさ」に特化した表現、セイヴォリーはそこにきのこやハーブ、革まで含めたやや広い概念だと捉えると整理しやすい。
なぜ熟成ワインでよく出てくるのか
セイヴォリーな香りは、熟成によって現れる「第三アロマ」と相性がいい。若いワインの果実味が落ち着いてくると、きのこや革、枯葉、スパイスといった香りが顔を出してくる。熟成したピノ・ノワールにきのこを感じる、というのはまさにこのパターンだ。
テイスティングノートでの使用例
セイヴォリーという言葉は、単体で使うより具体的な香りを添えたほうが伝わる。「セイヴォリー(干し椎茸やタイムのような)」と一言足すだけで、読み手への伝わり方がぐっと変わる。実際の表現はこんなイメージだ。
- 「熟した果実味に、ドライハーブやなめし革のセイヴォリーなニュアンスが重なる」
- 「セイヴォリーな旨味と塩気が、料理を引き立てる」
- 「果実味は控えめで、セイヴォリーな要素が主役のスタイル」
- 「若いうちは果実主体だが、時間とともにセイヴォリーな複雑さが増してきた」
テイスティングの現場で感じるのは、セイヴォリーとひとことで片付けてしまう人ほど、実はそのワインの個性を言い当てられていないケースが多いということだ。きのこなのか革なのかハーブなのか、どの方向のセイヴォリーかまで踏み込むと、ノートの解像度が一段上がる。
よくある質問
Q. セイヴォリーは「しょっぱいワイン」という意味?
A. 実際に塩辛いという意味ではない。塩気や旨味を感じさせる、甘くない食事向きの風味という、もう少し広い意味で使われる言葉だ。
Q. セイヴォリーとアーシーの違いは?
A. 重なる部分が多い言葉だ。アーシーは「土っぽさ」に特化していて、セイヴォリーはそれに加えて、きのこやハーブ、スパイス、革なども含む、やや広い概念になる。
Q. ワイン初心者でもセイヴォリーを意識できる?
A. できる。果実味の強いワインに慣れていると最初は地味に感じるかもしれないが、料理と合わせて飲むと良さが実感しやすい。和食のように出汁や醤油を使った料理から入ると理解が早い。
まとめ
セイヴォリーは、果実や花の華やかさとは別の方向から、ワインの複雑さを語るための言葉だ。塩気・旨味・スパイス・きのこ・ハーブ・革といった要素を束ね、甘くないのに引き込まれる味わいを表現する。反意語はsweet、隣接する概念はアーシーやumami寄りの旨味。熟成による第三アロマとも結びつきやすい。セイヴォリー(Savoury/Savory)という言葉を知っておくと、いつものワインの見え方が少し変わってくる。
THE WORLD FINE WINE | Fine wine begins with a great story.